2016年6月20日月曜日

SF/SV, Boston and NY (1)


ベンチャー投資額6兆円のアメリカの現状


 アメリカの一人あたりGDP水準は、主要先進国中トップを走り続けている。日本は、1990年代初頭にはアメリカの8割の水準を越えていたが、その後、差が開き続け、2014年にはアメリカの三分の二まで落ち込んでいる。フォーチュン500(グローバル・トップ企業ランキング)でも、100位以内に入る日本企業は37社(1995年)から7社に激減している。アメリカでは、セールスフォース・ドットコムなど、1990年代以降創業の新興企業が複数ランクインしているが、日本企業はゼロである。

 ベンチャー白書2015によれば、アメリカのベンチャービジネスへの投資額は493億ドル(6兆円)で、過去最高水準となっている。日本は1,200億円であるから、50倍の規模である。投資件数は4千件超で(日本は1千件)、単純計算で一件当り10億円超の規模である。未上場ベンチャーで、企業価値10億ドル超の企業を「ユニコーン」と呼ぶが、アメリカには50社存在するといわれる。筆頭は、配車アプリで世界中を席巻しているウーバー(企業価値510億ドル)や、空き部屋仲介を行うエア・ビー・アンド・ビー(同255億ドル)である。日本とアメリカの新興企業の動きは、桁違いの様相を呈している。

 国際IT財団では、2016年3月にアメリカのサンフランシスコ・シリコンバレー、ボストン、ニューヨークを訪れ、世界をリードする新産業創出の現場を調査した。シリコンバレーでは、ITに自信のある若者を世界各国から集め、様々なビジネスを発信している。ニューヨークでは、既存の金融産業等との連携のなかで、ITを活用するベンチャー(いわゆるフィンテック企業)が台頭してきている。ボストンでは、MITの人的ネットワークを背景に、IoTによるハードウェア産業が起きつつある。

 シリコンバレーでは、インキュベーション施設の草分け「プラグアンドプレイ・テックセンター」を訪れた。同センターはグーグルを輩出したことで有名である。サンフランシスコの郊外、シリコンバレーの中心サニーベールにある同センターに入ると、入居企業の国籍と思われる万国旗に迎えられる。最先端のインキュベーション施設ということで、新しく、無機質な白を基調としたオフィスが想像されがちだが、実際の施設は元フィリップス・セミコンダクターの社屋を使ったもので、とても温かみがあり、ほっとする雰囲気がある。



プラグアンドプレイ・テックセンター (シリコンバレー)
 
 同センターでは、アルゼンチン、コロンビア、イラン、インドなど世界中から集まった若い起業家達と話ができた。当然にグローバル展開を考えている彼らが集う様子は、アメリカというより、世界への玄関口のように思えた。そこにはイノベーションへの明確な意志があり、同センターのスタッフが受け止め、彼らの成長を支えていた。次回は、同センターの具体的な取組みを紹介する。
国際IT財団 http://www.ifit.or.jp
(初出:『生産性新聞』2016.6.15, 2498号)