ボストン・IoTの発信地に生まれたハードウェア・エコシステム
ボストンは、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)が集積する学術都市である。イノベーション環境が高く評価され、製造業のIoT化へ大転換を図るGEも本社移転を発表。市内中心部はシリコンバレー並みの経済成長を遂げている。
MITのサンジェイ・サルマ教授は、IoT黎明期の技術「RFID」(ICタグによる個別情報の自動認識システム。流通・製造現場などで導入)の標準化を推進してきた第一人者である。同教授によると、IoTとは技術ではなく、あらゆるものをデザインするボキャブラリー、すなわち語彙力である。IoTによって、あらゆる行動が新たにデザインされ、変化することに着目すべきだという。運転手を雇わず、スマートフォン・アプリによって固定費を各段に下げたウーバーが、世界各地で既存のタクシー業界を代替しようとしているのは、その代表例である。新しい思考・行動ができなければ、革新の波に乗り遅れてしまう。
サンジェイ・サルマMIT教授(右)
同教授によると、ミレニアル世代(25歳から35歳)に革新的な傾向があり、世界各国でIoTの大きな推進力になっている。「外国語の習得は13歳までが望ましい、といわれる。IoTも同じで、上の世代は、過去の知識や経験が邪魔をしてしまい、IoTという言葉で『再思考』することが難しくなる。そのため、IoTに対して抵抗が強くなる。日本では、45歳以上の世代が政策決定の実権を握っている点が、変革のスピードを弱めている。」(同教授)
シリコンバレーでもボストンでも、スタートアップは20~30代が中心だ。IoTのエコシステムでは、単に新たな企業を生み出すということではなく、新たな発想をもたらす「若い力」をいかに引き出すか、そして彼らをいかに支えるか、が問われている。
MITのほど近くに、ハードウェアのスタートアップ企業を支援するドラゴン・イノベーションがある。ロボット掃除機・ルンバ(iRobot社)の開発者らが創設した。ソフトウェアのスタートアップなら製品化と開発が同時に進められるが、ハードウェアではそうはいかない。また、プロトタイピング(試作)の段階が難しいと思われがちだが、実際は、量産化で壁にぶつかるケースが多い。同社では、それを専門の技術スタッフが支える。
ボストンは、さながら不夜城。MITの研究施設は明かりがこうこうと灯り、ドラゴン・インベーションのラボでも、夜も週末もプロトタイピングができる体制になっている。情熱を持って起業するのだから、とことんやりぬくのが当然、という熱い現場である。それをサルマ教授やiRobotの成功者が見守る。若者をその気にさせる仕組みが成り立っていた。
ボストンは、さながら不夜城。MITの研究施設は明かりがこうこうと灯り、ドラゴン・インベーションのラボでも、夜も週末もプロトタイピングができる体制になっている。情熱を持って起業するのだから、とことんやりぬくのが当然、という熱い現場である。それをサルマ教授やiRobotの成功者が見守る。若者をその気にさせる仕組みが成り立っていた。
国際IT財団 http://www.ifit.or.jp
(初出:『生産性新聞』2016.7.15, 第2501号)
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